"アプリの体験"から"音楽を消費"へ変えるためには
どうもta9tです。この記事は一応、#kosen10s Advent Calendar 2018 - Adventar 23日目の記事になっております。前日はつづかみの"これから学びの話をしよう"です。偶然なのか何なのか、今回書く記事は"これからの音楽の話をしよう"です。
音楽を聴く方も聴かない方も是非読んでいただいて、「たしかに」なのか「違う〜」なのか何かしらのフィードバックを貰えたら幸いです。
今回は自分が意味もなく責任感を持って日頃考えている、
ということについて出来る限りユーザーの立場から考えていきたいと思います。
目次
- 自己紹介
- この記事を書こうと思ったきっかけ
- 個人的な思い
- 好きな音楽を選べない理由
- サブスクリプションに頼ろう
- 音楽の価値の多様化
- どうすれば音楽が消費されるか
- YT Musicが音楽の消費を後押しするかも
- 音楽のファストファッション化は止めたい
- まとめ
自己紹介
自分で音楽を作ってみようとかは思わないので完全なる音楽の消費者です。
この記事を書こうと思ったきっかけ
- 就活を始めた
自分の音楽への思いや考えをまとめてみたいと思った - WEEKLY OCHIAI"音楽をアップデートせよ"を見た
やはりそうだよなと思うことが多かった - NewsPicksで最近やたらとあがっている音楽系の記事を見た
やはりそうだよなと思うことがあった(2回目)
個人的な思い
これは自分が持つ個人的な思いです。自分にとって音楽は精神状態を保つためのツールです。どこへ行っても、どんな仕事をしてても自分が自分であり続けて最高のライフパフォーマンスを発揮するために音楽を聴いています。
現に自分は2018年年末現在悩みがありません。
じゃあ何故多くの音楽を聴く必要があるのか。「音楽をたくさん聴くこと」と「悩みが無くなること」に関係性はあるのか。好きな曲だけ聴いていても精神状態は安定するぞという意見の方もいるかもしれません。
その理由はいたって単純です。人間には様々な精神状態があるからです。朝聴きたい曲や悲しいときに聴きたい曲など様々あると思います。そしてそれはさらに組み合わせがあります。
ここに書いた要因はあくまで一例です。このような感じで無数の要因によって作られた精神状態の組み合わせは無限に存在します。だって昨日と同じ状況ってことはあまり無いから。何が言いたいかと言うと、
好きな音楽を選べない理由
じゃあ好きな音楽を選ぶ方法を教えてくれって話ですよね。 まずは現実、ネガティブな話をしていこうと思います。音楽には前提としていくつかの致命的な弱みがあります。
これらの弱みが好きな音楽を選ぶことを難しくしています。これらを元に好きな音楽を選べない理由を詳しく説明します。
好きな音楽の定義が難しい
好きなアーティストや曲を言うことはそれほど難しく無いでしょう。しかし「どういう系統の音楽が好きですか?」と聞かれた時に答えるのは難しくないですか?
これは決して「ロック」とか「EDM」とかいう答えを求めてるんじゃなくて、「60sのガレージロック」とかより細かいところを聞いています。そうでないと検索ワードのターゲットが広すぎて、求める音楽にはなかなか出会えません。ロックとかEDMで検索をかけたら聴ききれないほどの音楽が検索結果として出てきます。
時間がかかるというイメージ
検索ワードを絞りきれない人には「これじゃない」といった音楽がたくさん現れて聴いてるうちに「もういいや」となってしまうでしょう。そうなんです、音楽は聴かないと良さが分からないんです。ゆえに音楽に詳しくない人にとって、好きな音楽を見つけることは時間がかかる作業というイメージが強いのでしょう。ゆえに同じ音楽ばかりを聴いてしまう。
音楽のコンテンツ化
最近ではYouTubeやSNSで新しい音楽に出会うことが普通になっています。コンテンツとしての音楽、バズる音楽の方が人に届きやすい時代になってしまっています。悪いことではないんですが、同じ属性の手札を増やしてもあまり意味がありません。それは同じ精神状態にしか効果を持たないからです。一回飽きたら全部飽きてしまうでしょう。しかし音楽の探し方を知らなければ結局メディアを通して受動的に知ることしか出来ません。
自分で探さないという選択肢はあるか
ただ、自分で探さないってことも出来ます。友達のオススメとかです。
「ラーメンと音楽のオススメは通な友達に聞け」と言いますが、ラーメンや音楽のように好みが分かれるが似たものが多いものに関しては自分を良く知る通な友達に聞いちゃった方が早いんです。しかし定量的な情報無しで答えられる人は相当音楽を聞いている人です。そんな友達いねえよって人も多いでしょう。*1
サブスクリプションに頼ろう
Netflixの登場で映画を見るようになった人や漫画アプリのおかげで漫画を読むようになった人は多くいるでしょう。月額会員制でコンテンツを楽しめるサービスのことをサブスクリプションサービスと言います。
音楽にもたくさんサブスクリプションサービスがあります。ここまで散々ネガティブな話をしてしまいましたが、我々にも使えるツールがあるんです。ついに解決策の登場です。
現在はSpotify、Apple Music、LINE MUSIC、AWAなどが日本では主流のサービスかと思います。2018年11月にはついにあのYouTubeもストリーミングサービスへの参入をはじめました。ではこれだけあるサービス、どんな違いがあるんでしょうか。
それぞれのサービスの良さ
これだけ有名な企業が本気を出してサブスクリプションサービスを開発しています。できる限り余計な情報を省くだとかサービス側から情報推薦をしたりだとか様々な進化を日々遂げています。無料版だけ使ったことがあるとか、3ヶ月だけ体験したという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。YouTube Musicに関しては後ほど詳しく書きます。
自分は上にあげた全てのサービスを使って、どれも素晴らしいサービスだと思いました。それぞれ差別化をしていて、おそらくきちんとターゲットを決めて目的を決めて機能実装をしているんだろうなと思います。
ではこれだけ素晴らしいサービスがある中で、日本での利用率と海外での利用率、サブスクリプションの売上は実際どうなんでしょうか?
日本の利用率は22%に対し他国の利用率は?
この記事によれば2018年4月の時点で音楽のサブスクリプションサービスの利用率は約22%程度です。うち、有料サービスの利用率はわずか10.7%と少ないですね。
少ないと言っても、記事には「2020年末には2,270万人へ!」と前向きなことが書いてある。そんなに少なくないんじゃないか?と思った方もいるでしょう。
それでは他の国の数字を見てみましょう。
まずは市場です。サブスクリプションサービスを含めたストリーミングサービスでの収益は音楽収益の約40%を占めています。2017年にCDなどの収益を超え、音楽収益で一番利益をあげています。参考資料
次にユーザー数です。
驚くことにアメリカでの音楽サブスクリプションサービス利用率は全体の半数を超えています。 アメリカでは2人に1人以上が登録しているのに対し、日本では5人に1人以下です。これまた驚きですよね。
日本における音楽配信の売上は?
この資料で一目瞭然でした。日本はまだCDなどの実物媒体の音源が強いんだなと。先ほど記述したように、世界では音楽の売上の約40%がストリーミングサービスです。ダウンロード購入も含めれば、約54%です。それに対し、実物媒体の音源が約30%。デジタル音源の売上が実物媒体の音源の売上を20%以上も上回ってます。それに対して日本はどうでしょう。実物媒体の音源の売上がデジタル音源の売上の5倍以上。こりゃだめだという声が出てしまいますね。
では何故日本でデジタル音源はまだまだ弱いのでしょうか?
日本でデジタル音源が伸びない2つの理由
先ほどの結果を見る限り、日本ではまだまだ実物媒体主義が残っているようです。サブスクリプションビジネスを含むストリーミング音楽サービスに限らず、音源を購入してダウンロードするということにも抵抗があるのかもしれません。
ではなぜ日本でデジタル音源が伸びないのでしょうか。
1,000円の価値を見出せない
大体のサブスクリプションビジネスの月額価格は1,000円前後です。どこかでこの値段聞いたことありませんか?自分は1,000円って聞いた時に「TSUTAYAでCD5枚借りるのと同じ値段じゃん!」って思いました。*2
TSUTAYAで借りると、データとして自分のパソコンに入れることができます。そしてサブスクリプションサービスのように事務所の都合などで配信されてない曲などがありません。
つまり月に5枚以上アルバムを聴かない人にとっては、確実に欲しい音源を手に入れることが出来るのTSUTAYAの方が良いという結論になってしまうのです。サブスクリプションに月額1,000円払うならTSUTAYAの方が今まで通りだし良いよって。
音楽を聴く以上の価値をサービスに見出せない
これがとても大きな課題だと思います。聴きたいと思ったら課金する人がいる、そんな単純な世界だったら良かったんですが、そんなに甘くはない。MusicBoxやMusic FMの存在です。
これらのアプリでは多くの音源を無料で違法にダウンロードすることができます。何度もApp Storeから消されたりしてるみたいですが、色々くぐり抜けて何度も復活するみたいです。
「そんな悪いことしたらダメじゃん」でみんな使わなくなったら平和なのですが、やはり誰しもお金は無駄遣いしたくありません。出来ることが同じでお金を払う必要がない選択肢があるならそちらを選ぶ人もいるでしょう。
無駄遣いだと思われないくらいに音楽に付加価値をつけないとサブスクリプションサービスへの有料登録はしないでしょう。
音楽の価値の多様化
現在音楽というのはどこでも誰でも聴きたいときに聴ける時代になりました。昔だったらCD1枚でも学生には高価だし、さらにプレイヤーを買う必要がありました。自分もCDをMDにやいて、MDプレイヤーで聴いていました。そこまで辿り着くのに、テストで良い点を取るのと誕生日を経る必要がありました。かなり長期的な計画だったのを覚えています。
しかし今はスマホがあれば好きなだけ音楽を聴けます。PCが家にあればYouTubeでも聴けます。そしてTikTokやライブ配信アプリが出てきたことにより、コンテンツとしての音楽も生まれ始めました。ゆえに従来の「聴くだけの音楽」という時代は終わってしまったんです。
ここで2018年のレコチョク年間ランキングを見てみましょう。
上にあげた「現代における価値ある音楽とは」の意味を少しわかっていただけるでしょう。1位の米津玄師さんに関しては、コンテンツを生み出す天才だと思っています。ボカロPだった頃から自分で楽曲からMVまで制作してアップロードをしていました。現在でも楽曲の多くはMVがあり、YouTubeにあがっています。そして変な話、男性らしい低い声があればそれっぽく歌えてしまう。これも聴きたくなる理由の1つでしょう。
その他2018年かなり有名になったDA PUMPのU.S.A.は2位、37位にはダンシングヒーローも。動画投稿サイトの影響で踊りやすい曲というのもTOP100には多くランクインしています。YouTuberやお笑い芸人の方達も踊る動画をYouTubeやTiktokに投稿してさらにコンテンツとして拡がりを見せました。その他踊るといえば乃木坂や欅坂の曲などを踊る方も多くいらっしゃいますね。そして多くの楽曲がランクインしている星野源さんの楽曲にも毎回ポップな振り付けがあります。
まだYouTuberの楽曲はTOP100には入ってないのですね。これには驚きました。しかしこうやって全体を見るとやはりタイアップはまだまだ強いですよね。テレビが見られない時代になったと言われてますが、結果としてYouTuberの楽曲はまだランクインせず、ドラマやCMタイアップの楽曲がこれだけランクインしている。YouTuberの楽曲はやはりプロのアーティストからしたら劣るかもしれませんが、それでもかなり影響力を持ったアーティストも多く存在します。そして大きな会場でどんどんライブを行なっています。来年のランキングに期待ですね。
どうすれば音楽が消費されるか
おそらくサブスクリプションサービスを開発している方々はこれらの課題や現状を把握していることでしょう。しかし、これを打開するのってすごく難しいと思います。
自分も常に「1ヶ月で5枚以上アルバムを聴かせる方法」を考えてはいますが、革新的なアイデアにはまだ辿り着いていません。
開発に携わっている方々には「分かってるんだよ」と言われてしまうかもしれませんが、自分なりに今やるべきことをまとめてみました。
今やるべきことの4つにおいて各サービスはすごい勢いで改善していると思います。
例えばSpotifyやYouTube Musicは自分だけのプレイリスト作成機能を持っています。好きなアーティストを選択すると類似アーティストが出てくるのですが、おそらく特徴量は楽曲の類似度だけで取っていません。知名度や対バンの多さみたいなところでも取ってる気はします。とても正確で驚きました。
音楽からオフライン体験への導線を作るという点に関しては、LINE MUSICはLINEというプラットフォームを最大限に活かしています。
- LINEを使って友達から音楽を知る
- LINE MUSICで音楽を消費する
- LINE LIVEでアーティストやライブ情報について知る
- LINE TICKETでライブチケットを取る
全く無駄がありません。とても素晴らしいサービスだと思います。チケット業界はLINE TICKETでかなり進歩すると思います。今まではバンバンサーバーが落ちていた他のチケットサービス。冷静になったらあってはいけないことなんです。ただ購入側からしたらチケットが欲しくて必死だから頼るしかない。いくらUXが酷くてもストレスがあってもライブへの熱い想いだけで使っていました。そういったストレスを大方解決してくれるのがLINE TICKETだと思います。ありがとうございます。
YT Musicが音楽の消費を後押しするかも
この資料を見た時に、そりゃYouTubeもストリーミングやるわな〜って思いました。参考資料
ちなみに48%がストリーミングアプリの利用率なのですが、有料サービスの利用率は28%、そして無料サービスの利用率は20%なんです。やはり世界で見るときちんとお金を払ってる人の割合の方が多いんですね。*3
サブスクに無いものは買う借りるの概念が消える?
先ほどサブスクには解禁されてないものが多いので、TSUTAYAで確実な音源を手に入れる人が一定数いるという話をしたと思いますが、現在YouTubeに音源をあげてないアーティストはほとんど存在しません。アーティストの多くは音源を売るためのマーケティング手段の1つとしてYouTubeにMVをアップロードします。しかしYouTube Music(以下YT Music)の参入により、音源を買わずしてストリーミング再生が出来るようになってしまいました。これによりユーザー側から見た音源を買う借りる意味は大きく減少してしまいました。
アーティストはアルバムを聴いてほしいだろう
しかしアーティストとしては、「いや俺らの曲そんなもんじゃないから」と言いたいでしょう。きちんとアルバムを聴いてほしいと。楽曲の順番からアルバム限定の楽曲まで全て子供のように育てた楽曲なんですから。本当なら全てのMVを作りたいでしょう。しかし、それではアルバムが売れなくなってしまう。でもプッシュしたい1曲くらいは多くの人に知ってもらいたい!という思いでYouTubeにアップロードしている。しかしYT Musicによってその努力が全て一掃されようとしています。
確かに、YT Musicの登場で音楽を消費する人は増えるでしょう。今まで作業の時にしか聴けなかった音楽が移動中でも聴けるようになるんですから。しかしアーティストやレコード会社は焦るでしょうね。え、そんなの反則じゃんって。
これが素晴らしいアーティストたちのサブスク解禁に繋がると嬉しいなと思います。音楽は消費されてなんぼの時代になっています。その波に乗り遅れたら、音楽で収入を得ることは難しくなるでしょう。ファンクラブとかがあるところは別かもしれませんが。
まあどちらに転んだとしてもYT Musicの登場は音楽の消費を加速することに繋がると思います。レコード会社のみなさん、どうかサブスク解禁をしないままMVを短編でしかあげなくなるという血迷った行動はしないでください。お願いします。
音楽のファストファッション化は止めたい
これまで"音楽を消費してほしい"という目的のもと、主に音楽の現状や課題というものをつらつらと書いてきたのですが最後に1つだけ個人的な願いがあります。
それは「音楽のファストファッション化はやめてほしい」ということです。もちろん音楽には人それぞれ楽しみ方があります。ファッションもそうです。個人が良いと思ったものを選んで楽しめば良いと思います。
ファッションはファストファッションが出てきて大きく変わってしまいました。安くて良い品がたくさん出たらそれを選ぶのは当たり前です。トレンドも抑えてるし。しかし、人間考えることをやめたら選ぶ能力も衰えるのです。多くの人が安いものを買い続けることにより、「本当に良いもの」を選ぶ能力が無くなったんじゃないかと思っています。というより、選ぶかどうか考えるフェーズまでいかない。「安くて良いものあるし、これで良いじゃん」みたいな。
今後、音楽は消費される方向にどんどん進んでいくと思います。楽曲を多く出した方が儲かる時代にもなるかもしれません。その時に自ずと全体の音楽の質は下がってしまうと思います。しかし、忘れないでください。サブスクリプションサービスでは質の高い音楽も聴けるということを。自分で好きなものを選ぶ感覚を忘れないでください。それが自分の個人としての思いです。20年後、子供にThe Beatlesを聴かせて「単調でつまらない」とか言われたら泣き叫ぶかもしれません。
まとめ
こんなに長い文章をここまで読んでくれてありがとうございます。年末年始で忙しかったこともあり、この記事を書くのに1週間以上もかかってしまいました。
自分は音楽の消費に携わるところで働きたいと考えています。予定では20卒です。音楽に対して似た思いを持つ方、ぜひ話してみたいです。よろしくお願いします。
最後かなり個人的な話になってしまいましたが、2019年今年もよろしくお願いします。たくさん音楽を聴いていこうと思います!では!